好きな論文・総説


私(和多)がこれまでに(特に強い)影響を受けてきた論文たちです。



Doupe A. & Kuhl P.

"Birdsong and human speech: Common Themes and Machanisms"

Annu. Rev. Neurosci 1999. 22: 567-631

 自分が大学院生のときに読んで、それから15年以上経って再度読んでみても色々なアイデアが想起される総説。Allison Doupeはもう亡くなってしまったが、彼女からまだまだ教えてもらうことがある。

 songbirdを用いた研究を志す人には是非読んでもらいたい総説。

 

Linneweber, GA., .....and Hassan, BA.

"A neurodevelopmental origin of behavioral individuality in the Drosophila visual system" Science (2020)

  行動の個体差と神経回路の個体差を結びつけ、それが遺伝・環境要因ではなく、確率的なゆらぎに起因していることを論じている。

Introduction, Discussion部に引用されている論文の多くがとても興味深いものが列挙されており、とても勉強になった。と同時に、個体差研究やっぱり面白いじゃないかと、勇気づけられた。

 

Ding, Y., ......... and Stern, D. L.

"Natural courtship song variation caused by an intronic retroelement in an ion channel gene" Nature (2016)

  行動を構成素因に分けて、その各形質に関わる遺伝子座に落とし込む研究手法に感動する。drosophila故にできること。それを他の動物種でどのようにして実現するのか?感動しているだけではいけない。

 

Bendesky A. ... Hoekstra HE.

"The genetic basis of parental care evolution in monogamous mice"

Nature. (2017)

  モデル生物でなくても、Hybridを利用することで行動と遺伝子をちゃんと結び付けることができることを示した論文。次の論文(Weber Jet eta la., 2013)からの進展ぶりが、すごいの一言。

 

Weber Jet .... ... Hoekstra HE.

"Discrete genetic modules are responsible for complex burrow evolution in Peromyscus mice"

Nature 493: 402-405 (2013)

  線虫・ショウジョウバエ・マウスといったモデル生物ではなく、野外で生息する動物(トンネルネズミ)でも、いよいよここまでできるのかと、色々な可能性を感じさせてくれる内容。彼らのこれまでの地道な研究あっての賜物と思う。

 

Gompel N, Prud'homme B, Wittkopp PJ, Kassner VA, Carroll SB.

“Chance caught on the wing: cis-regulatory evolution and the origin of pigment patterns in Drosophila.”

Nature. 2005 Feb 3;433(7025):481-7.

  この論文のfigureのハエの写真をみて読み始めた。これをきっかけにEvo-Devoを知り、Carroll SBを知った。行動の進化を真剣に考えるようになった。

 

Frankel N, Erezyilmaz DF, McGregor AP, Wang S, Payre F, Stern DL.

“Morphological evolution caused by many subtle-effect substitutions in regulatory DNA.”
Nature. 2011 Jun 29;474(7353):598-603.

 このタイトルに惹きつけられて読んだ論文。ハエのさなぎの毛に着目して、これだけの研究が花開いていくのかと思う。

 

Lienert F. et al.

"Identification of genetic elements that autonomously determine DNA methylation states"

Nature Genetics, 43:1091-1097 (2011)

 なぜゲノムDNAのメチル化が長大なゲノムのなかで決まった場所に決まったタイミングで同じように入ったり、取られたりするのか?このことをずうと考えてきた。この問いに示唆を与えてくれる論文だと思える。

 

Rebeiz, M., Jikomes, N., Kassner, V. A., Carroll, S. B.

"Evolutionary origin of a novel gene expression pattern through co-option of the latent activities of existing regulatory sequences"

Proc Natl Acad Sci U S A, 108:10036-10043 (2011)

 感動した。こういうことをソングバードでできたら行動の進化ともっとちゃんと向き合えると思う。

 

Liu WC, Gardner TJ, Nottebohm F.
“Juvenile zebra finches can use multiple strategies to learn the same song.”
Proc Natl Acad Sci U S A. 2004, 101(52):18177-82.

   研究者としても、一人の友人としても尊敬しているWan-chunの論文。彼がポスドクとしてNottebohmラボに移ってすぐくらいの研究で、動物の行動をよく観察してこそ見えるものがあることを教えてくれる。

 

Weaver IC, Cervoni N, Champagne FA, D'Alessio AC, Sharma S, Seckl JR, Dymov S, Szyf M, Meaney MJ.

“Epigenetic programming by maternal behavior.”
Nat Neurosci. 2004 Aug;7(8):847-54. Epub 2004 Jun 27.

 この論文を読んで、これからは個体差をサイエンスの土台で理解していける時代がくると確信した。

 

Hammock EA, Young LJ.
Microsatellite instability generates diversity in brain and sociobehavioral traits.”
Science. 2005 Jun 10;308(5728):1630-4.
 ポスドク時代に参加したSFN (Society for Neuroscience) meetingで、この論文がまだ発表前にこのポスターを見てすごく面白いポイントをついた研究だと思っていたら、その半年後にSciencepublishされた。当時第一著者のHammockさんが大学院生だったと思う。

Young LJ, Nilsen R, Waymire KG, MacGregor GR, Insel TR.
“Increased affiliative response to vasopressin in mice expressing the V1a receptor from a monogamous vole.”
Nature. 1999 Aug 19;400(6746):766-8.

 大学院生のときにこの論文を読んでスゴイと思った。今でも大学の講義で紹介しています。

 

Jarvis ED, Scharff C, Grossman MR, Ramos JA, Nottebohm F.

“For whom the bird sings: context-dependent gene expression.”

Neuron. 1998 Oct;21(4):775-88.

 この論文を読んで、Erich(1st author)に会いたいと思い、その後の留学先を決めるきっかけとなった論文。